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第三部集団心理 第1章2節 精神科医の会話術③自己理解編 / Conversation Skills of a Psychiatrist 3 self-awareness

02:49 生物心理社会モデル
04:05 生物
11:46 心理
20:30 社会

今日は「精神科医の会話術③自己理解」について解説します。

精神科医の会話術の第1弾は「概論編」として全体像を説明しました。
第2弾は「準備編」、そして今回の第3弾が「自己理解編」となります。

◯会話術とは?

この会話術は僕なりの会話術です。
準備、自己理解、聴く、伝える、他者理解と5つの要素に分けています。

◯自己理解はなぜ必要か? 自分を通じて相手を理解するから
相手のことや病気を理解するためにも、自分を理解しておくことが大事です。
他者を通じて自分を知ることもありますが、結局自分を通さないと相手のことがわからないということもたくさんあります。

僕らは「心を使って相手のことを理解する」と言います。
自分の経験を伸ばしたり縮めたり、自分のプライベートな友人関係を連想して、それを伸ばしたり縮めたりしながら患者さんを捉えていくということをします。

そのためにも自己理解は大事です。
そもそも自分を知るだけでも結構いろいろなことがわかります。
自分の悩みやその解決を知ることで、相手のことをすごく理解できるようになったりしますのでとても重要です。

◯自己理解はなぜ必要か? 無意識に相手を傷つける可能性があるから
それから、自分を知らないと相手に対して無意識に何か害のあることをしてしまったり、自分の主義主張を押し付けてしまうこともあるので、自分を理解する事は大事です。
ある意味において、自分の経験を応用することでしか相手のことを理解できません。これは精神科医だけでなく誰でもそうです。とんちんかんなことになりがちなので、そうならないように学問的な裏付けをして自己理解を深めていく。
そしてその自己理解をリライトしていき、正しく認識していくことが重要です。

■生物心理社会モデル

人間理解をする上で、現代の精神医学でよく使われるのは「生物心理社会モデル」です。

生物学的な要素もあれば、心理学的な要素もありますし、社会学的な社会の中でのその人の立ち位置などもあります。これらを総合的に考えて相手のことを理解するということをやります。

良いとこ取りのようにも聞こえますし、すごく中途半端な感じもします。
きちんと本質を捉えているのかどうかわからなくなりますし、複数の公理体系を使うことできちんとした事実を捕まえられないような気もしますが、医学とはそういうものだと思ってください。

脳科学者から見たら医師は本当に中途半端で何もわかっていないなと感じるでしょうし、心理学者から見ても社会学者から見てもそのような感じだと思います。
そうは言っても、ちゃんと患者さんを見て診療しているのだから許してよと思ったりします。

それはともかくこのようなモデルを使ったりします。

■生物

生物学的な理解というのは、脳科学的な理解と考えてもらって構いません。

基本的には僕らが考えている脳のイメージは、「神経細胞の集まり」です。
心というものは脳が作っているものです。ですから魂というものを考えたりはしません。

基本的には、患者さんと喋ってる時に、この人の脳のどこに障害があるのか、脳のどこに病気が起きているのかを想定します。
医学としてわかっていないこともありますが、将来的には脳の病気としてわかるのだろうという仮定のもと考えています。これが生物学的な理解です。

また、神経細胞はざっくり集まっているのではなく、ある程度機能ごとにくっついています。
大きい会社のようなものです。社長がいて、部署があり、支社があったりします。このように機能ごとに分かれています。

機能ごとに分かれながらも、連携して1つの機能を起こします。
埼玉支部と千葉支部と東京支部が合わさって関東支部ができるイメージです。

機能と機能が組み合わさってまた大きな機能を生んでいる。
そのたくさんあるものの全体からなんとなく自我(意識)が浮かび上がってくる、というのが脳のイメージです。

もう少し簡略化すると、脳というのは何かの刺激に対して合理的な部分が演算したり、感情的な部分が動いたり、記憶の部分が思い出されたりして意識が上がってきて何かの行動をするということが起きます。

例えば感情に関するところの障害というと、うつ病、躁うつ病などがあります。
記憶に関係するところでいえば、トラウマの問題などがあります。
合理的に考えにくいということであれば、発達特性の問題が考えられます。

こんなに単純なことではありませんが、イメージとしてはこのようなことを考えます。
トラウマがあるのであれば、記憶のところに問題があるから、記憶を塗り替えるような治療をしていく必要があるな、感情の部分に問題があるのであれば、感情と切り離すような思考トレーニングをしてその間に薬をしっかり効かせてあげれば良くなるな、などと考えます。

人間は生まれたばかりの時は皆同じ脳みそなのか? それが経験や学習によって変化して個性が出てくるのか? などと考えるかもしれません。このような考えを「白紙論」と言います。

実際はそのような事はなく、生まれつき決まっていることはたくさんあります。
特性、何に興味を持つか、経験知、年齢、体力。

年齢によっても脳の動きは変わります。
思春期前の脳と思春期後の脳は違います。性ホルモンの影響が出ている脳と出る前の脳ではまったく違うのです。歳を取ったあとの脳も違います。
女性であれば閉経後の脳は閉経前の脳とはやはり違ってきます。

人間の脳は人によって全然違うので、そのような多様性をどこまで理解しておくのかが重要です。
逆にコペルニクス的転回として、神様は人間を多様性があるように作っている。
多様性を作るためには、理解し合えないほど違わないと多様性はできません。それくらい違うと思いながら相手のことを理解する。そして自分の特性や変わっているところを理解するのが重要です。

僕はどう考えても自分は変わっていると思いますが、それは自分で考えてもわかりません。
相手から、社会全体から見たときに自分はどんな人間なのか、多分こういう形なんだろうなと捉えながら多様性を理解し、自己理解をしています。

「四十にして惑わず」と言いますが、惑いますよね。
年齢によって悩みや課題は違います。20代ならば20代特有の悩みがあります。20代の時には経験が足りないから考えられないこともたくさんあります。

僕もまだ子供が小さいので、思春期の子供を抱えた経験もありません。いろいろな患者さんの話を聞いているので、なんとなく相手が悩んでいることはわかりますが、自分で経験したことはないのでその辺も加味しながら相手の心をどう理解していくのかはよく考えます。

自己理解においてもそうで、自分は何を知らないのかを加味しながら相手の心に入っていきます。
相手自身もこのような経験が足りないのだなと思いながら、それならばこういう事は考えられないのかな、などと考えながらやっています。

あとは脳の特性も考えます。
どのようなことは考えられるのか、どのような学習経験をしているのか、このような言い方をしても通じないのではないか、期待値など数学的な考え方の方がエンジニアの人には通じやすいのではないか、などいろいろ考えます。

■心理

心理学的に相手を理解することもよくします。

本能的なバイアス、人間はどのような認知をしやすいのか、合理的に考えない時にどのような選択をしやすいのかを考えるということです。

生物学的な「合理的・感情・記憶」も1つの人間の心のモデルですが、いろいろな「モデル」があります。
さまざまなモデルを使いながら相手の気持ちを考えます。

この心理学的なモデルというのは、科学的に正しいものというわけではありません。
認知行動療法にしても何にしてもそうです。
人間の機能を扱いやすいように描写しているものです。
血液型占いや動物占いと大きくは変わらないといえば変わらないのですが、より臨床的で確からしく、有効性があるという意味では明らかに違うかと思います。

僕の場合は精神分析が好きということもありますし、少し古い教育からスタートしていますので分析的なモデルを使いますが、これが正しいということではありません。使いやすいから使っています。

例えば、「意識・前意識・無意識」というものがあります。
意識できるものもあれば、ギリギリ意識できるもの(前意識)もあるし、まったく意識できない無意識の世界もあるという心の描写です。

「自我・超自我・リビドー」の三すくみもあります。
親の教えが厳しかったりすると、超自我が強くて自分を責めがちになるというようなことです。

「Dポジション・Sポジション」というのは、「今はシゾイドポジション(S)でスプリッティング(分裂)な要素が強くなって、自分で考えられなくなっているから、乖離したものを自分の中に統合できるように抑うつポジション(D)に戻さないといけない」などと言います。

「投影・転移・逆転移・投影同一視」が起きていないか。

「成熟・神経症水準・精神病水準」
今は不安や混乱が強くて赤ちゃん返りをしてしまい(退行)、精神病水準まで落ちているのではないか。

このようにいろいろなモデルを使いながら相手のことを理解します。
これは使いやすいモデルを使えば良いのではないかと思います。

概要欄続きはこちら(字数制限のため)
wasedamental.com/youtubemovie/5080#c

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再生リスト:精神科医の会話術
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『精神科医がこころの病気を解説するChとは?』
 一般の方向けに、わかりやすく、精神科診療に関するアレコレを幅広く解説しています。動画における、精神分析や哲学用語の使用法はあくまで益田独自のものであり、一般的(専門的)な定義とは異っているところもあります。僕がもっとも説明しやすいとたまたま感じる言葉を選んだだけなので、あまり学術的にとらないでいただけると嬉しいです。
            早稲田メンタルクリニック院長 益田裕介

『自己紹介』
益田裕介
防衛医大卒。陸上自衛隊、防衛医大病院、薫風会山田病院などを経て、2018年都内で開業。専門は仕事のうつ、大人の発達障害。といいつつ、「なんでも診る」ちょっと変人よりの町医者です。
趣味は少年ジャンプとお笑い。キャンプやスキーに行きたいです。
2020年6月5日より断酒継続中。

【参考】
厚労省みんなのメンタルヘルス www.mhlw.go.jp/kokoro/
カプラン 臨床精神医学テキスト第3版
倫理規定について note.com/mentalyoutubers/n/nb130991f3fa4

【コメントについて】
・コメントは承認制です
・コメントは益田が目を通していますが、手が回らず、質問にはお答えできません。ご理解よろしくお願いします。
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#精神科医の会話術

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